【特別講義 第25回】竹内先生_インタビュー記事Vol.2

前回から、間があいてしましましたが、竹内先生のインタビュー記事第2弾を掲載いたします。
講師は前回(細胞培養 特別講義 第24回)に引き続き、東京大学 の竹内先生です。前回は、先生の幼少期から将来を決める出会いのエピソードをお聞きしました。 

今回は、いよいよ研究をスタートさせてから、その後の原動力ともなる感動体験をされたお話をお聞きしました。
とても楽しそうにお話されている先生からは、聞いているだけでわくわくした感動が伝わってきました。どうぞご覧ください。

■ 講師紹介ページ:東京大学 竹内昌治先生 

(画像はイメージです)

研究室での研究のはじまり

入った研究室はロボットの研究室で、ヒューマノイドの先駆けとしてロボットハンドやけん玉をやるロボットを作っていました。下山勲先生は世界初の二足歩行ロボットを作った方で、とてもすごい先生がいる研究室だと感じましたし、自分自身もそのようなものを作ってみたいと思っていました。

当時、三浦宏文先生と下山勲先生は「人のような動きをすることによって、ロボットの中に人の知能とか、意識とか、意思とかが生まれてくるんじゃないか」という思いで研究をやっていたけれども、「ロボットは作った人の思い通りに動いているだけだからすごくないんじゃないか」と思いはじめて、昆虫を真似たロボット研究に興味がシフトした時期でした。

そのため、研究室には6足歩行ロボットがカチャカチャ動いていました。本物の昆虫は、脚が1本なくなると残った5本の脚で最も効率の良い歩き方をするようになったりするんですよ。また、昆虫には頭部・胸部・腹部とあり、胸部から6本足が生えているですが、頭部と腹部を切っても普通に6足で歩くんですよ。それくらい昆虫というのは効率的なシステムで動けるんです。そのようなシステムを抽出して埋め込んだロボットを先輩たちが作っていて、実際にそのロボットも足を1本取ると、5本足で効率の良い歩き方をするようになったんです。これは面白いなぁと、自分もやりたいなぁと思っていたら、先生に「研究は人と同じことをやってはいけない」「自分のやりたいことをゼロから考えなさい」と言われました。

研究テーマを考える上で最初の宿題は、「研究室で飼っているいろんな昆虫を観察して、昆虫の素晴らしい動きとか機能を抽出して、それをロボットに入れなさい」というものでした。昆虫はいろんなところにセンサーがついていて、何かを感じると音を立てずにササッーと動いたりするんです。先輩たちはいろんな技術を持って実装していたわけですが、当時の私の技術では、そんな精巧な機械は作れないんじゃないかと思ってしまったんです。

そして結局、私がやったのは「昆虫みたいなものは作れないので、昆虫からパーツをいただいて、それを機械と結びつけて、あたかも昆虫のように動かすのはどうですか?」「例えば、昆虫の足をマッチ箱に接着剤で貼り付けて、そこに電気刺激を与えることによって動くのではないか?」と軽く提案したところ、三浦先生、下山先生はいいんじゃないか、と同意してくださったんです。

研究というものは、その意義がなければやってはいけないのが一般的なので、指導教員によっては、私の提案の研究テーマは、即否定されて終わってしまっていたと思います。それに対して、三浦先生、下山先生は私の提案に、「楽しそうだからやってみたら」と背中を押していただけました。そのおかげで、自分が提案したテーマを思う存分楽しく研究できました。今までやった研究の中で一番楽しかったですね。このような先生方に最初に出会えたのは、本当に幸運だったと思います。

研究の源になる感動体験

卒業研究では最終的には、紙コップを切ってボディ部分を作って、そこに昆虫の脚2本を接着剤でつけて、筋肉に電気刺激を送るための細い針を埋め込みました。その筋肉に電気刺激を送るとピクッピクッと動くんですが、その刺激だけではなめらかに動かなかったんです。なぜだろうと思って何回も実験してみたんですが思いつかなかったんですよ。そこで本物の筋肉が動いているときの電気的な変化を計測してみると、きれいな二相性の波形で出てきました。それをコンピューターで抽出して、そのまま切った昆虫の脚に電気刺激を送ったらどうか?とやってみたら、きれいに動くわけです!その時は夜中だったんですが、本当に感動して。その感動が私の今を作っているんじゃないかと思いますね。この現象は、実は、筋肉を専門とされている学者からすれば当たり前のことなんですが、それを自分で発見した喜びやおもしろさというものを4年生になって初めての卒業研究で体験できたことが本当によかったと思っています。

今でも講演の始めにこのときの動画を見せることがありますよ。これが私の研究の源というか活力になっていますから。

この研究が面白すぎて、修士・博士に進んでもこの研究をやりたいと思いました。でも、実際は上の学年になればなるほど社会に貢献する研究をしていかなければいけないんです。

卒業論文で作ったものを再現するために、毎回昆虫の脚を切ってきて、接着剤でくっつけて、とやっていると量産なんてできないですよね(笑)。

私が研究室をもったときに、実際は昆虫の脚を切るのではなくて、昆虫の脚のようなものをゼロから作って、それを再現性高く量産して組み合わせることを考えたわけです。それによって、例えば生き物のような動きであったり、エネルギー効率の非常に高い生物らしい動きであったり、機能を再現できるだろうと。それを私は、『バイオハイブリットマシン』や『バイオハイブリットシステム』と呼び、現在でもその研究を続けています。

(次回に続く)

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