Stem-Partner® ACF 技術情報
ヒトiPS細胞用培地/ヒトES細胞用培地
本製品は、ヒトiPS細胞用培地(ヒトES細胞用培地)です。フィーダーレスヒトiPS細胞(ヒトES細胞)の未分化維持培養にお使いいただけます。bFGFを添加することで、未分化状態を維持、さらにbFGFを加えないことで、胚様体の形成までお使いいただけます。シングルセル培養、クランプセル培養両方が可能で、培地切り替え時の馴化培養が必要ございません。安定した増殖能を示し、長期培養後も染色体異常なく、三胚葉への分化も容易に行えます。基礎研究から臨床研究までお使いいただける使用用途の広い製品です。
特徴
- 動物由来成分フリー(ヒト由来成分もフリー)
- 低タンパク培地
- GMP対応施設の製造品
製品コード | 製品名 | 用途 | 容量 | 貯法 | 希望小売価格 |
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28143 | Stem-Partner® ACF | フィーダーレスヒトiPS/ES 細胞用未分化維持培地(動物由来原料不含) | 500 mL | -15℃ | ¥24,000 |
本品で未分化維持培養が可能な細胞例
ヒトiPS細胞 | 201B7, PFX#9 |
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ヒトES細胞 | H9, SEES2, SEES5 |
技術資料一覧はこちら
実施例
- I. 培地性能評価 (H9)
- II. 培地性能評価 (SEES2,SEES5)
- Ⅲ. スフェロイドの作製
- Ⅳ. 足場剤による細胞形態の違い
- Ⅴ. 週末プロトコル
- Ⅵ. 培養容器と播種細胞数
- Ⅶ. ラミニン添加法による培養評価 NEW!!
I. 培地性能評価 (ヒトES細胞 H9)
ヒトiPS/ES細胞培地Stem-Partner ACFを、神戸医療産業都市推進機構(川真田先生)にて評価を実施していただいた。

図A.B.C.D. ヒトES細胞(H9)を本ヒトES細胞用培地(with VTN-N)にて未分化維持培養した結果、高い増殖能を示し(A)、染色体異常も認められなかった(B)。また、継代後の遺伝子発現においても、未分化状態を維持していた(C)。さらに、胚様体形成後における三胚葉への分化能も有している(D)ことが示された。[川真田先生(FBRI)ご提供データ]
表E. 多能性幹細胞における分化能の指標となるCHD7遺伝子のコピー数について、当社2製品を用いて未分化維持培養した結果、高いコピー数が維持されていることが認められた。
引用文献 ”Differentiation potential of Pluripotent Stem Cells correlates to the level of CHD7. Yamamoto T., et al. Scientific report. 2018”
II. 培地性能評価 (SEES2,SEES5)
国立研究開発法人国立成育医療研究センター 梅澤先生が樹立された臨床向けのヒトES細胞(SEES2株、SEES5株)を用いて、本ヒトES細胞用培地の性能評価を行なった。その結果、Stem-Partner® ACF はSEES2 株及びSEES5株に最適な培地であった。
(国立成育医療研究センター 梅澤先生との共同研究より)

Stem-Partner® ACFを用いて、数継代培養したSEES2株とSEES5株の細胞形態を観察した。
数継代培養後、分化したような形態の細胞は⾒られなかった。

Stem-Partner® ACFで培養したSEES2株をヌードマウスに投与したところ、奇形腫を形成し、体内においても奇形腫として三胚葉に分化していることが確認された。
Ⅲ. スフェロイドの作製
バクテリアルディッシュ(細胞非接着培養皿)上での浮遊培養によるEB形成

EZSPHERE®によるEB形成像(AGC株式会社)

Ⅳ. 足場剤の違いによる細胞形態

Ⅴ. 週末プロトコル
(できる限り、毎日培地交換していただくことを推奨しています)
週末の培地交換作業不要(週末対応)プロトコル
曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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培養日数 | Day4/ (Day0) |
Day1 | Day2 | Day3/ (Day0) |
Day1 | Day2 | Day3 |
作業内容 | 継代 | 培地交換 | 培地交換 | 継代 | 培地交換 2倍量 |
- | - |
週2回の継代により、毎日の作業をルーチン化する。
また木曜日に継代を実施し、翌日(金曜日)の培地交換時に2倍量の培地を加えることで、
2日間(土日)の培地交換作業を省略する。
Ⅵ. 培養容器と播種細胞数
培養容器 | 推奨播種細胞数(個) | 培養面積(cm2) | 培地量(mL) |
---|---|---|---|
6 well plate | 6×104 ~ 2×105 | 9.5 | 2 |
60 mm dish | 1.26×105 ~ 4.2×105 | 21 | 3 |
25T flask | 1.5×105 ~ 5.2×105 | 25 | 3 ~ 5 |
100 mm dish | 5×105 ~ 1.57×106 | 78.5 | 10 |
確認した細胞株:ヒトiPS細胞株 201B7, PFX#9
Ⅶ. ラミニン(iMatrix‐511)添加法による培養評価
一般的に、iPS/ES細胞をフィーダーフリー条件で培養するには、ECMをあらかじめ培養基材へコーティングしておくことが必要で、このコーティング作業は、1時間から1晩程度かかる。しかし、iMatrix-511を使用することで、この手間と時間を削減できる可能性があることが報告されている(*参考文献1)。そこで当社培地でも同様な方法で手間と時間を削減できるかを検討するため、ECMをプレコートせずに、当社ヒトiPS細胞培地にiMatrix-511を添加し、iPS細胞の培養を行った。
検討の結果、ECMをプレコートせずに、当社培地に添加することでもiPS細胞の安定的な培養が可能であることがわかった。さらにECMの使用量も半減した。
以上のことから当社培地にECMを添加して使用することで、プレコーティングの時間や手間を削減できるとともに、コスト削減につながることがわかった。
■方法
従来どおりECMをプレコートした培養方法(以下、Precoated法)とプレコートせずに培地に添加した培養方法(以下iMatrix-511添加法)でiPS細胞の形態や増殖能を比較した。

iMatrix-511の情報はこちら(株式会社マトリクソーム)
■結果
どちらの方法でも細胞形態、増殖に大きな差異は認められなかった。(詳細は こちら)
iMatrix-511添加法においても安定的に6継代培養が可能であることを確認した。
iMatrix-511をECMとして使用する場合、従来であれば事前に基材へコーティングする必要があった。しかしながらiMatrix-511を播種時に培地へ添加しておくことで、コーティング作業が不要となり、従来の半量で同等な効果が得られることがわかった。

参考資料
Yamamoto T., et al. Scientific report. 2018. “Differentiation potential of Pluripotent Stem Cells correlates to the level of CHD7.”
FAQ
- Q1. 血清は使用していますか?
- Q2. 抗生物質は入っていますか?
- Q3. ACFは何の略ですか?
- Q4. 保管上の注意点はありますか?
- Q5. 足場材料は何を使えばよいでしょうか?
- Q6. ROCK阻害剤は添加しなければいけませんか?
- Q7. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞には使用できますか?
- Q8. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞をフィーダーレス培養に馴化する際に使用できますか?
- Q9. 継代培養および培地交換の頻度はどのくらいですか?
- Q10. bFGF添加後どれくらい使用可能ですか?
- Q11. どのようにすれば購入できますか?
Q1. 血清は使用していますか?
血清は使用しておりません。
Q2. 抗生物質は入っていますか?
添加されておりませんので、開封後は無菌環境下にてご使用ください。
Q3. ACFは何の略ですか?
動物由来成分不含(Animal Component Free)の略になります。ヒトおよび動物由来成分を含んでおりません。
Q4. 保管上の注意点はありますか?
本品は、凍結した状態で出荷しております。使用時は、温浴(37℃)による急速融解は避け、室温下で数時間または冷蔵にてゆっくり融解してください。
融解後(bFGF未添加)に冷蔵(2~8℃)にて保管する場合は、4週間以内を目安にご使用ください。4週間以内に使用しない場合には、必要量を小分けにした後、凍結保存してください。その後は、融解・凍結を繰り返さないでください。
Q5. 足場材料は何を使えばよいでしょうか?
VTN-Nと組み合わせて培養していただくことを推奨しています。本品とVTN-Nとの組み合わせは、長期培養においても未分化状態を維持しており、その後の三胚葉への分化も確認しております。
足場材料としてiMatrix-511を用いた条件下においても安定した培養が可能であることを確認しております。詳細なデータが取得でき次第、本ページへ掲載する予定です。
Q6. ROCK阻害剤は添加しなければいけませんか?
シングルセル播種培養には必ず添加してください。ただし、継代播種時のみ添加し、翌日の培地交換時からは添加する必要はありません。クランプセル播種培養においては添加する必要はありません。
Q7. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞には使用できますか?
本品はヒトiPS/ES細胞のフィーダーレス培養に最適化されており、フィーダー細胞の生存には適さないため、オンフィーダー培養には使用できません。
Q8. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞をフィーダーレス培養に馴化する際に使用できますか?
使用できます。KnockOut™ SR(Life Technologies)を含む培地にてオンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞に関して、継代播種時から本品とVTN-Nとの培養系に切り替える事で、問題なくフィーダーレス培養できることを確認しております。プロトコル等はお問合せください。
Q9. 継代培養および培地交換の頻度はどのくらいですか?
状態のよい細胞を得るためには、クランプセル播種培養では、基本的に2日に一度培地交換を、シングルセル播種培養では、毎日培地交換を推奨しています。
週末プロトコルもございますので、こちらでご確認いただけます。
Q10. bFGF添加後どれくらい使用可能ですか?
bFGF添加後、冷蔵にて保管し、2週間以内に使い切るようにしてください。
Q11. どのようにすれば購入できますか?
当社代理店からご購入いただけます。代理店については下記フォームよりお問い合わせください。
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