Stem-Partner® SF 技術情報
本製品は、ヒトiPS/ES細胞の培地です。bFGFを添加することで、未分化状態を維持することができます。さらにbFGFを加えないことで、胚様体の形成までお使いいただけます。
特徴
- シングルセル、クランプセル培養両方に使用可能
- フィーダーレス化の際に馴化培養が不要
- 安定した高い増殖能
- 長期培養でも未分化状態を維持, 染色体異常なし
- 三胚葉への分化も容易
製品コード | 製品名 | 用途 | 容量 | 貯法 | 希望小売価格 |
---|---|---|---|---|---|
28140 | Stem-Partner® SF | フィーダーレスヒトiPS/ES細胞用 未分化維持培養培地 |
500 mL | -15℃ | ¥24,000 |
本品で未分化維持培養が可能な細胞例
ヒトiPS細胞 | 201B7, 253G1, 1383D2 (Riken BRC), PFX#9 (FBRI) |
---|---|
ヒトES細胞 | KhES-1 (Riken BRC), H9 (WiCell) |
実施例
- 1. Stem-Partner® SFを用いたヒトiPS/ES細胞の長期培養の検証
- 2. Stem-Partner® SFを用いたヒトiPS細胞の継代方法
2-1) クランプセル播種培養したヒトiPS細胞の継代方法
2-2) シングルセル播種培養したヒトiPS細胞の継代方法 - 3. ラミニン添加法による培養評価
1. Stem-Partner® SFを用いたヒトiPS/ES細胞の長期培養の検証
Stem-Partner® SFおよびVitronectin(VTN-N)を用いた培養方法は、ヒトiPS/ES細胞の安定した未分化状態維持を可能にしました。また、高い増殖能を有しており、分化能や染色体の安定性も確認されました。 (詳細は“こちら”をご確認ください)



2. Stem-Partner® SFを用いたヒトiPS細胞の継代方法
※ Pronase/EDTA for Stemを用いた継代方法を掲載いたしました。
2-1) クランプセル播種培養したヒトiPS細胞の継代方法(6ウェルプレートの場合)
培地の調製(用時調製)
- 必要量のStem-Partner® SFを室温に戻す。
- リコンビナントヒトbFGFを100 ng/mLとなるように添加する。
継代培養
- 培地を除去し、PBS(-)で洗浄する。
- あらかじめ37℃に温めたPronase/EDTA for Stemを加える。
- 室温にて2分程度静置し、細胞間の接着が緩む程度まで処理する。
- Pronase/EDTA for Stem を除去し、PBS(-)で洗浄する。
- Stem-Partner® SF(+bFGF) を加える。
- 細胞を遠心チューブに回収し、ピペッティングにより適度な大きさのクランプを形成する。
- あらかじめVTN-Nコートしたプレートへ播種する。
- 48時間後に培地交換を行う。その後は2日に一度、培地交換を行う。


フィーダーフリー クランプセル培養したヒトiPS細胞株PFX#9の継代の様子
Pronase/EDTA for Stemを用いてフィーダーフリー培養したヒトiPS細胞の継代ができることを確認しました。細胞塊を新しいプレート上に播種後、4~6日程度で次の継代が可能であることを確認しました(Scale bar; 500μm)。
注意点
お使いの細胞株により、増殖能やコロニー形態は異なります。予め最適な継代条件(播種時のクランプサイズ、継代比率、培養日数、剥離処理時間等)を検討することをお勧めします。
●手順の詳細は“Stem-Partner® SFプロトコル集”をご確認ください。
2-2) シングルセル播種培養したヒトiPS細胞の継代方法(6ウェルプレートの場合)
培地の調製
- 必要量のStem-Partner® SFを室温に戻す。
- リコンビナントヒトbFGFを100 ng/mLとなるように添加する。
- 継代播種時に使用するStem-Partner® SF(+bFGF) には、さらにY-27632を添加する。
継代培養
- 培地を除去し、PBS(-)で洗浄する。
- あらかじめ37℃に温めたPronase/EDTA for Stemを加える。
- 37℃にて2~5分間静置し、細胞を分散・剥離する。
- Stem-Partner® SF(+bFGF)を加え、遠心チューブに回収する。
- 遠心 (440×g , 3分)後、上清を除去する。
- Stem-Partner® SF(+bFGF, +Y-27632)を加える。
- ピペッティングにより完全にシングルセル化する。
- あらかじめVTN-Nコートしたプレートへ、2×105 cells/ウェルとなるように播種する。
- 翌日からStem-Partner® SF(+bFGF)にて毎日培地交換を行う。


フィーダーフリー シングルセルフラット培養したヒトiPS細胞株PFX#9の継代の様子
Pronase/EDTA for Stemを用いてフィーダーフリー培養したヒトiPS細胞の継代ができることを確認しました。細胞塊を新しいプレート上に播種後、4日程度で次の継代が可能であることを確認しました(Scale bar; 500μm)。
注意点
お使いの細胞株により、増殖能や細胞形態は異なります。予め最適な継代条件(播種密度、培養日数、剥離処理時間等)の検討をお勧めします。
●手順の詳細は“Stem-Partner® SFプロトコル集”をご確認ください。
3.ラミニン(iMatrix‐511)添加法による培養評価
当社iPS/ES細胞用培地Stem-Partner® SFは、フィーダーフリーでiPS/ES細胞を培養するための培養液です。
一般的にiPS/ES細胞をフィーダーフリー条件で培養するには、ECMをあらかじめ培養基材へコーティングしておくことが必要で、このコーティング作業は、1時間から1晩程度かかります。iMatrix-511を使用することで、この手間と時間を削減できる可能性があることが報告されています(*参考文献1)。当社培地でも同様な方法で手間と時間を削減できるかを検討するため、ECMをプレコートせずに、当社培地にiMatrix-511を添加し、iPS細胞の培養を行いました。
検討の結果、ECMをプレコートせずに、当社培地に添加することでもiPS細胞の安定的な培養が可能であることがわかりました。さらにECMの使用量も半減しました。
以上のことから当社培地にECMを添加して使用することで、プレコーティングの時間や手間を削減できるとともに、コスト削減につながることがわかりました。
■方法
従来どおりECMをプレコートした培養方法(以下、Precoated法)とプレコートせずに培地に添加した培養方法(以下 Uncoated法,iMatrix-511添加法)でiPS細胞の形態や増殖能を比較した。
図

iMatrix-511の情報はこちら(株式会社マトリクソーム)
■結果
どちらの方法でも細胞形態、増殖に大きな差異は認められなかった。(詳細はこちら)
iMatrix-511添加法においても安定的に6継代培養が可能であることを確認した。
iMatrix-511をECMとして使用する場合、従来であれば事前に基材へコーティングする必要があった。しかしながらiMatrix-511を播種時に培地へ添加しておくことで、コーティング作業が不要となり、従来の半量で同等な効果が得られることがわかった。

参考資料
Kawamata S., et al.(2015) PLOS ONE 10(6):e0129855(外部リンク:PLOS ONE)
参考資料
Kawamata S., et al.(2015) PLOS ONE 10(6):e0129855(外部リンク:PLOS ONE)
FAQ
- Q1. 血清は使用していますか?
- Q2. 抗生物質は入っていますか?
- Q3. 保管上の注意点はありますか?
- Q4. 剥離・分散にはPronase/EDTA for Stemを使用できますか?
- Q5. 本品で培養した細胞はCP-5Eで凍結保存できますか?
- Q6. 足場材料は何を使えばよいでしょうか?
- Q7. ROCK阻害剤は添加しなければいけませんか?
- Q8. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞には使用できますか?
- Q9. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞をフィーダーレス培養に馴化する際に使用できますか?
- Q10. 継代培養および培地交換の頻度はどのくらいですか?
- Q11. bFGF添加後どれくらい持ちますか?
- Q12. どのようにすれば購入できますか?
Q1. 血清は使用していますか?
血清は使用しておりませんが、Bovine serum albumin(BSA)を使用しております。
Q2. 抗生物質は入っていますか?
添加されておりませんので、開封後は無菌環境下にてご使用ください。
Q3. 保管上の注意点はありますか?
本品は、凍結した状態で出荷しております。使用時は、温浴(37℃)による急速融解は避け、室温下で数時間または冷蔵にてゆっくり融解してください。融解後(bFGF未添加)に冷蔵(2~8℃)にて保管する場合は、1ヶ月以内を目安にご使用ください。1ヶ月以内に使用しない場合には、必要量を小分けにした後、凍結保存してください。その後は、融解・凍結を繰り返さないでください。
Q4. 剥離・分散にはPronase/EDTA for Stemを使用できますか?
クランプセル培養、シングルセル培養ともにPronase/EDTA for Stemを使用できます(実施例2. もしくは“Stem-Partner® SFプロトコル集 ”をご確認ください)。
Pronase/EDTA for Stemの他にも、クランプセル培養であればGentle Cell Dissociation Reagent(STEM CELL TECHNOLOGIES, #27174等)、シングルセル培養であればTrypLE™ Select(1×),no Phenol Red(Thermo Fisher Scientific,12563011等)の使用も可能であることを確認しております。
Q5. 本品で培養した細胞はCP-5Eで凍結保存できますか?
社内データではありますが、CP-5Eで凍結保存できることを確認しています(CP-5E技術情報ページの実施例3. へ)。
Q6. 足場材料は何を使えばよいでしょうか?
VTN-Nと組み合わせて培養してください(“Stem-Partner® SFプロトコル集”参照)。本品とVTN-Nとの組み合わせは、長期培養においても未分化状態を維持しており、その後の三胚葉への分化も確認しております。
足場材料としてiMatrix-511を用いた条件下においても安定した培養が可能であることを確認しております。詳細なデータが取得でき次第、本ページへ掲載する予定です。
Q7. ROCK阻害剤は添加しなければいけませんか?
シングルセル播種培養には必ず添加してください。
クランプセル播種培養においては添加する必要はありません。
Q8. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞には使用できますか?
本品はヒトiPS/ES細胞のフィーダーレス培養に最適化されており、フィーダー細胞の生存には適さないため、オンフィーダー培養には使用できません。
Q9. オンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞をフィーダーレス培養に馴化する際に使用できますか?
使用できます。KnockOut™ SR(Life Technologies)を含む培地にてオンフィーダー培養したヒトiPS/ES細胞に関して、継代播種時から本品とVTN-Nとの培養系に切り替える事で、問題なくフィーダーレス培養できることを確認しております。プロトコル等はお問合せください。
Q10. 継代培養および培地交換の頻度はどのくらいですか?
クランプセル播種培養では、2日に一度培地交換を行ってください。
シングルセル播種培養では、毎日培地交換を行ってください。
Q11. bFGF添加後どれくらい持ちますか?
bFGF添加後2週間で使いきってください。
Q12. どのようにすれば購入できますか?
当社代理店からご購入いただけます。代理店一覧はこちらでご確認いただけます。
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